京都工芸繊維大学長 吉本 昌広
京都工芸繊維大学は、前身となる京都高等工藝学校(1902年設立)と京都蚕業講習所(1899年設立)から、日本文化の源である京都の風土の中で培われた〈知と美と技〉を探求する独自の学風を築きあげ、学問、芸術、文化、産業に貢献する幾多の人材を輩出してきた国立大学です。
京都の文化?文明は、技術?品質を備える匠のものづくりと信頼関係により培われてきました。京都には永きにわたり、生活や文化の隅々にいたるまで洗練されたものであらねばならないという人々の強い思いが根づいています。一方で、単に技を継承するだけでなく、革新的な挑戦を続け、新しい価値を創造しようと発展してきた地でもあります。この心意気と創造的挑戦心を、我々は「京都思考(KYOTO Thinking)」と表しました。本学は、「京都思考」を教育?研究に活かし実践することで、地球と日本のありうる未来を担う人材を育成します。
そのため、本学が育成する人材像は、単なる技術者ではなく、社会が直面している課題に対し、リーダーシップを発揮しつつ、プロジェクトを成功に導くことができる国際的な工科系高度専門技術者を想定しています。本学ではこの人材像を「TECH LEADER(テックリーダー)」と呼んでいます。「TECH LEADER」を育成するため、本学では、「専門力」「リーダーシップ」「外国語運用能力」「個の確立」の4つの能力を工繊コンピテンシー(知識だけでなく、スキル、行動も含んだ能力)と位置づけ、学部から大学院までの教育を通して、これらの力が確実に身につけられるようなカリキュラムを用意しています。
現在世界中で起こっている地球規模の課題を解決するためには、自然科学のみでなく、人文科学?社会科学の考え方も取り入れた「総合知」の考え方が必要です。本学には、バイオ、材料、電子、機械、情報、デザイン、建築、繊維、人文?社会科学などの様々な分野を研究する教員がおり、大学の研究力の基盤を担っていますが、これらの教員が一堂に会し、異なる専門領域の教員同士で意見を交わしながら、課題解決に取り組んでいます。
自身の専門分野を深掘りするだけでなく、異分野融合のプロジェクトに関わることで、今の研究に新たな意味づけがなされ、違う出口や社会実装の形が見えることがあります。新しい展開を模索している人も、自身の研究を突き詰めたい人も、きっと大きな発見が得られることでしょう。
また、課題解決には、大学内での閉じた研究だけでなく、国内外の他の大学や研究機関、産業界等との学外連携も重要です。特に産学連携の場においては、現在、これまでに本学が築き上げてきた企業や大学等との連携基盤を基に、単独の企業や大学だけでは実施が難しい社会課題を解決するための、先進的?革新的な研究を共同で実施しています。
産学連携のほか、地域連携や国際連携など、外からのエネルギーを取り込むことにより本学を前進させるべく、今後も組織対組織の学外連携を推進していきます。
真理探究で得られる喜びは、学術の原動力です。新たな価値を作る喜びは、工学の推進力です。丁寧なコミュニケーションや連携を通じてお互いに認め合う先に、共に咲く喜びがあります。喜びは、夢と希望につながっています。
社会や産業が望む新たな価値を創造し、多くの人の夢や希望を実現できるよう、京都工芸繊維大学はこれからも挑戦していきます。
2024年4月1日
学長 吉本 昌広
1983年 | 京都大学工学部電子工学科 卒業 |
1985年 | 同 大学院工学研究科修士課程電気工学第二専攻 修了 |
1988年 | 同 大学院工学研究科博士後期課程電気工学第二専攻 修了 |
1988年 | 工学博士(京都大学) |
1988年 | 京都大学工学部電気工学第二学科 助手 |
1995年 | 京都大学大学院工学研究科電子物性工学専攻 講師 |
1997年 | 京都工芸繊維大学工芸学部電子情報工学科 助教授 |
2004年 | 京都工芸繊維大学 地域共同研究センター 教授 |
2007年 | 京都工芸繊維大学 電子システム工学部門 教授(配置換) |
2012年 | 京都工芸繊維大学 学長補佐 |
2015年 | 京都工芸繊維大学 足球比分直播,雷速体育 教授(配置換) |
2015年 | 京都工芸繊維大学 副学長 |
2018年 | 京都工芸繊維大学 理事?副学長 |
2024年 | 京都工芸繊維大学長 |
◆令和6年度 入学宣誓式 祝辞 日本語?English(令和6年4月5日)
◆令和6年度 大学院工芸科学研究科 学位記授与式(秋季)祝辞 日本語 ?English (令和6年9月25日)
◆令和6年度 大学院工芸科学研究科 入学宣誓式(秋季)祝辞 日本語 ?English (令和6年9月25日)