ショウジョウバエ遺伝資源センター

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 キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は、赤い眼をもつ体長3-4mm のハエで、人間の住居があれば世界中どこにでも見つかります。1910年(明治43年)、このハエの白眼の突然変異体を発見したT. H. モーガンは遺伝子が染色体にあることを初めて実証しました。この成果により、彼は後にノーベル賞を受賞しました。以来、キイロショウジョウバエはもっとも有名な実験生物のひとつとなり、今日まで多くの突然変異体が発見あるいは人為的に作製され、生命科学の様々な研究に用いられてきました。ショウジョウバエは、例えば味や匂いなどの感覚、学習、求愛などの高度な神経活動の実験に用いることも容易です。さらに1999年にゲノムの全塩基配列が決定されると、キイロショウジョウバエの遺伝子数はヒトのおよそ半分(約14,000個)で、そのうち約10,000個は構造や機能の点でヒト遺伝子とよく似ていることが明らかになりました。ショウジョウバエが生命科学研究に必須のモデル生物としてますます重要となりつつあることを受け、平成11年に本研究部門の前身となるショウジョウバエ遺伝資源センターが設置されました。平成27年7月からは昆虫先端研究推進拠点の研究部門として他部門と連携しながら活動を行っています。
 現在、本研究部門は世界最大規模の約30,000種類のショウジョウバエ系統を保有し、依頼に応じて国内外の研究者に提供する国際的ストックセンターとして研究コミュニティに貢献しています。また、国内外で新たに作出された突然変異を受け入れることで、保有系統の一層の充実も図っています。
 上記の収集?提供事業に加え、本学独自の遺伝資源の開発?研究にも取り組んでいます。ヒトゲノム断片を組み込んだヒト化ショウジョウバエ系統は生物種の枠を超え、未診断疾患の病因解明などゲノムの機能と構造を明らかにする研究資源となります。さらに豊富な突然変異を駆使し、生命システムの頑健性、精子形成と受精、配偶行動、ゲノム進化、老化などに関する研究を精力的に行っています。赤眼のハエの背に乗って、生命の原理と多様性の謎に挑む。最終目標は生と死、老いをみつめなおすことです。

教員
センター長/教授 高野 敏行
都丸 雅敏

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