京都工芸繊維大学美術工芸資料館では、大学の前身校のひとつである京都高等工芸学校が1902(明治35)年に開校して以来、使命として掲げていた京都の美術工芸の近代化への貢献を検証するために、これまで多くの展覧会を開催してきました。 2014年度から2019年度にかけては、京都市立芸術大学芸術資料館のご協力を得て、京都高等工芸学校と京都市立美術工芸学校(京都市立芸術大学の前身校)の図案教育を比較する展覧会を開催し、両校がたがいに刺激しあいながら、京都の伝統産業界に新しい図案を提供していたことを示しました。
今年度は、奈良女子大学の全面的なご協力を得て、女子教員の養成学校であった奈良女子高等師範学校(奈良女子大学の前身校)初期の教育資料と、京都高等工芸学校の教育資料とを組み合わせることにより、明治?大正期の高等教育機関における教育のあり方とそこで用いられた資料の実態を明らかにしたいと思います。
両校は、教員養成と工芸指導者養成という方向性こそ異なりますが、同時期に奈良と京都で高等教育を推進していたという点で、その資料には意外な共通点がみられます。本展では、「正倉院」「有職故実」「ガラススライド」「染織」の四つのジャンルをとりあげました。両校の教育資料の共通点と相違点を、展示を通して実感していただければ幸いです。