汎用樹脂のマイクロファイバーで高度の電気機械特性を発見

 本学繊維学系 石井佑弥助教らの研究グループは、産業技術総合研究所の延島大樹研究員、植村聖研究チーム長らとの共同研究により、膜状態では圧電(注1)効果を示さない汎用樹脂(ポリスチレン)が、電界紡糸法(注2)によってマイクロファイバー化するだけで、圧電材料の逆圧電(注3)特性に似た電気機械特性(逆圧電的特性)を示すことを世界に先駆けて明らかにしました。
 加えて、得られた逆圧電的特性から見かけの圧電d定数(注4)を算出したところ、準静的な電圧印加の場合では30,000 pm/Vを超える値が、1 kHzの高周波の電圧を印加した場合でも約13,000 pm/Vという従来の圧電材料の値[例:圧電樹脂膜≤ 53 pm/V、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)≤ 700 pm/V]を大きく上回る値が得られることを明らかにしました。さらに、この電界紡糸ポリスチレンマイクロファイバー膜で得られた特異な逆圧電的特性を説明する数理モデルも初めて提案しました。
 圧電効果を示す樹脂製ナノ/マイクロファイバーの研究領域では、膜状態でも圧電効果を示すいわゆる圧電樹脂(ポリフッ化ビニリデンなど)を材料として用いた研究が数多く報告されているような状況でした。このようななか本研究では、汎用樹脂(ポリスチレン)であっても電界紡糸法によるマイクロファイバー化により、高度の逆圧電的特性を示すことを発見しました。従って本発見は、材料選択の範囲を広げるとともに、安価な汎用樹脂を用いることで極軽量、柔軟、優れた特性の圧力センサーやアクチュエーターが安価かつ大面積で製造できる可能性を示しました。さらに、ポーリング(注5)などの後処理を要しないため、製造工程の省工程化や省エネルギー化が期待されます。

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(用語解説)
?注1)圧電:本資料では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や圧電樹脂などの圧電材料の多結晶体に生じる正圧電現象と逆圧電現象を総じて圧電と表現している。
?注2)電界紡糸法:樹脂の溶液もしくは溶融体を高電圧で帯電させ、静電引力によりナノ/マイクロファイバーを紡糸する方法
?注3)逆圧電:PZTや圧電樹脂などの圧電材料の多結晶体に電場を加えると、ひずみが生じて変形する現象
?注4)圧電d定数:圧電特性の指標の一つ。ポーリング:高電界などを利用して物質内の電荷の偏りの方向をそろえる処理方法