所属 | 基盤科学系 |
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氏名 | 山下 直之 助教 |
期間 | 平成30年9月18日-平成31年3月23日 |
滞在先 | Environmental Ergonomics Research Centre, Loughborough Design School, Loughborough University, Loughborough (イギリス) |
平成30年9月より約半年間Loughborough UniversityのDesign Schoolに滞在しています。Loughborough(ラフバラ)は、East Midlands 地方のLeicestershireにある町であり、ロンドンより北へ150 kmほど離れた場所にあります。Loughboroughへはヒースロー空港から地下鉄や特急を乗り継ぎ3?4時間ほどで着きます。「borough(バラ)」とは市場(market)の意味があり、Loughboroughは市場で栄えていたようです。イギリスのいたるところに〇〇boroughという町名があるので、これらの町も市場で栄えていたのかもしれません。
Loughboroughは人口約5万人の町ですが、そのうちの1万6千人程度は大学生が占めています。大学の休暇期間であるSummer holiday(7月?9月)、Christmas holiday(12月中旬?1月初旬)、Easter holiday(3月末?4月末)には、ほとんどの学生が帰省するためLoughboroughの町はまるで休暇中のオフィス街のように閑散とします。
いわずもがなイギリスは緯度が高いため冬季の日照時間は短く、冬至の日の出時刻は8時過ぎ、日の入り時刻は16時前と日照時間は8時間弱しかありませんでした。その上、イギリスは天気が悪いことでも有名ですが、事実その通りであり、曇天日や雨天日は薄暗く、日照時間はさらに短くなります。どこか北陸地方の冬の空を連想させます。前述のとおり曇天や雨天が多いのですが、日本のように雨が降り続けることは珍しく、1日のうちで目まぐるしく天候が変わります。平均気温については、夏季では京都市と比較して10℃ほど低いのですが、冬季のそれは京都と同程度です。また一年を通して湿度が比較的低いのも特徴なので過ごしやすい土地だと感じています。日照時間や気温を考えると個人的にはサマータイムが導入され暖かくなる4月?10月ごろの渡英が最適であると感じています。
Loughborough UniversityはTimes Higher Educationが発表する“Table of Tables”(Times and Sunday Times Gold University Guide、The Guardian University Guide、Complete University Guideの3つのランキングの総合評価)で2018年のランキングで5位に入る大学です。なかでも私の教育?研究分野であるスポーツ科学分野に関してはQS World University Rankings, Sports-related Subjectsにて2017年、2018年、2019年に世界1位と評されています。さらに、イギリスで1番多くのオリンピック選手を輩出している大学でもあるため、学術とスポーツの両方ともに有名な大学としても知られています。近年では特にSchool of Sport, Exercise, and Health Sciencesが有名ですが、大学としては1966年にLoughborough University of Technologyとして発足しているため元々は工科系大学でした。現在はDesign、Aeronautical, Automobile, Chemical & Materials Engineering、Business & Economics、Civil & Building Engineering、Scienceなどの学部があります。
大学キャンパスは東西に2 kmほど、南北に1 kmほどあり、単一キャンパスとしてはイギリス最大の面積(437エーカー)を誇っています。さらにロンドンのQueen Elizabeth Olympic Park(ロンドンオリンピック?パラリンピックのメインスタジアム)にもキャンパスを有しています。
この度の滞在はLoughborough Design Schoolに属するEnvironmental Ergonomics Research Centre (EERC)のProfessor George Havenithに受け入れていただきました。
EERCではヒトが寒冷?暑熱、高地(低酸素環境)に曝された時のヒトの反応を生理学?人間工学の観点から研究しています。EERCではメカニズムを追求する基礎研究も行われていますが、実生活で直面する種々の課題を解決するような実践的なテーマについて数多く研究しています。このような背景から企業との共同研究も盛んに行われており、多くの博士課程の学生の研究テーマとなってきました。現在でも多くの企業と共同研究を継続しており、博士課程の学生が担当している研究は商品開発にも繋がっています。またこれらの企業は博士課程の学生のスポンサーとなっています。さらに、EERCで行われた研究成果は国際規格(ISO)にも採用されています。
国際共同研究についてはUniversity of Sydneyのグループと共同研究を行なっているほか、近年はEUの大学が参加する国際共同研究プロジェクトにも参画しています。学内での共同研究についてはSchool of Sport, Exercise, and Health Sciencesとも積極的に行なっており、その成果はロンドンオリンピック自転車競技?トラック種目にてイギリスチームの金メダル獲得に繋がったとのことでした。
私のEERCでの活動は、主に博士課程、修士課程、学士課程の学生の研究指導です。EERCの博士課程はプロジェクトベースでの進学が多いため、入学時点で研究計画や内容はある程度決まっています。したがって、研究内容について指導することは難しいのが現状です。指導内容の詳細についてはEERCに在籍している全員と企業との間に守秘義務契約が交わされているため記載することはできませんが、実験データの分析方法、統計解析、発表スライドの作り方などについて指導しています。これらは教員と学生とのミーティング時に指導することもありますが、他にもランチ時、デスクワーク中、はたまたパブでなど、時も場所も関係なく研究指導に携われています。EERCでは、教員と学生との距離は近く、お互いファーストネームで呼び合っています(イギリスでは普通かもしれません)。さらに、金曜日にはFriday Night Drink (FND)と称し、教員と学生とが一緒にパブに行き談笑するなど、教員と学生との関係性がよいことも学生が気軽に教員に指導を仰げる雰囲気に繋がっているのではと感じます。そしてこのようなラボの環境が論文の生産性の高さにつながっていると感じています。
授業に関する活動については、School of Sport, Exercise, and Health Sciencesに教育研修の受け入れをお願いしましたが、スーパーグローバル大学創成支援事業と同様の依頼が世界各国から届いており、授業を担当することは難しいとのことでした。そこで、講義への聴講の可否について伺ったところ、そちらは可能とのことでした。講義では学士課程の学生と一緒に机を並べており、授業内容の説明方法、授業展開、授業用スライドの構成などについて研修しています。また、授業後には、授業の担当教員の方々と授業の説明方法、教員個人の考える授業中の留意点などについて意見交換をしています。
今回の海外派遣にあたり、スーパーグローバル大学創成支援事業ならびに多大なるご助力をいただきました国際課の皆様に深く御礼申し上げます。また、海外派遣にあたりご支援を頂きました基盤科学系の先生方、特に今回の派遣の機会をいただきました昨年度の学系長を務められた野村照夫教授、派遣を快く承諾していただきました芳田哲也教授、来田宣幸准教授、事務補佐員の西村弓子様に深く御礼申し上げます。また、私の滞在を快く承諾していただきましたProfessor George Havenithをはじめ、Dr. Simon Hodder, Dr. Alex Lloyd, Dr. Davide FilingeriならびにEERCの皆様の厚遇に深く御礼申し上げます。