所属 | デザイン?建築学系 准教授 |
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氏名 | 登谷 伸宏 |
期間 | 令和5年8月28日-令和5年12月3日 |
滞在先 | SOAS University of London(イギリス) |
2023年9月から11月にかけてSOAS University of London(School of Oriental and African Studies)にVisiting Scholarとして滞在し、学部?大学院教育の実態を視察するとともに、英語による専門教育について研修を行った。
SOASはロンドン大学に所属する大学のひとつであり、アジア、およびアフリカ地域を研究対象としている。おもに人文学系の学科で構成されており、各地域の政治?経済から歴史?文化にいたるまでさまざまな分野について学ぶことができる。キャンパスはロンドンの中心部ラッセル?スクエアに位置する。大学の近隣には、Birkbeck University of LondonやUniversity College London(UCL)といった大学があり、大英博物館や大英図書館も至近距離に所在するなど、ロンドンのなかでも最大の文教地区にキャンパスがある。また、SOASは、学生のほぼ半数を留学生が占めており、多様な文化的バックグラウンドを持った大勢の学生がともに学ぶという非常に特色のある大学でもある。
SOASでは、日本宗教学を専門とするProf. Lucia Dolceの講義を聴講するとともに、毎週開かれるJapan Research Centre主催の特別講義に参加した。講義は、日本における宗教の歴史を古代から時代に沿って解説するというもので、聴講していたのはアフリカ系イギリス人と、中国?日本?アルゼンチン?イタリアなどさまざまな国からの留学生であった。講義はすべて英語で行われ、2時間のうち約3分の2が講義、残りの3分の1が教員と学生による討論に充てられていた。聴講を通して、日本の歴史や宗教文化をいかに英語で教育するのかを学ぶことができたのは大変貴重な体験であった。だが、それ以上に印象的だったのが、教員による講義の準備が周到に行われていたことである。すなわち、Moodle上の講義のページに毎週の講義の概要を示すとともに、各回とも受講に先立って読むべき著作や論文、講義内容に関連する著作や論文のコピーなどを多数掲示するというものであった。学生は、各回の内容に関する基礎的な知識を備えた上で講義に参加しなければならず、受講に先立ちそれらに目を通すことが求められていた。学生にとっては自宅での学習時間が大幅に増えることとなるが、講義への理解度を深めるためには非常に有効な手法だと考える。
講義が終わった後や、講義のない日は、だいたい図書館で過ごしていた。SOASの図書館は、アジア?アフリカ地域に関する図書の蔵書数では欧米諸国でもトップクラスにある。もちろん日本に関わる図書も多く、それらを利用して講義内容に関わることを調べたり、日本から持って行った仕事をしていたりした。
さらに、毎週水曜日に、Japan Research Centreの主催する特別講義が行われていることも驚きであった。特別講義は、外部から招聘したさまざまな分野で活躍する講師が、おもに日本に関わるそれぞれの研究について報告し、それについて討論を行うというものであり、とても刺激的だった。講義の依頼など準備が大変なことは容易に想像されるが、こうしたことは本学で取り入れていくべき点であろう。
また、私自身もCentre for the Study of Japanese Religion主催の特別講義において、研究報告の機会を得ることとなり、11月2日(木)に”The reconstruction of religious buildings during Toyotomi Regime”と題した報告を行った。参加した教員や学生からはさまざまな質問や意見をもらうことができ、自身の研究を深める良い機会となった。
最後にキャンパス生活のなかでも重要なことのひとつであろう、SOASでの食事事情について報告しておきたい。SOAS周辺には多くのレストランやファストフード店があり、食事に困ることはない。しかし、キャンパスには食堂?コーヒースタンド?売店があり、多くの教員や学生は食堂でランチメニューを注文するか、売店でサンドイッチやサラダなどを購入していた。ランチメニューはだいたい4種類から選ぶことができ、メニュー自体は毎日変わっていた。値段は平均すると7ポンド程度で、周辺のレストランやファストフード店などに比べると比較的安いと思う。また、コーヒースタンドではSOASの学生が働いており、コーヒーや紅茶を販売していた。一方、食堂は、一日を通じて学生たちの交流の場、学習の場ともなっており、多くの学生が昼食時だけでなく、夜まで友人や同じ講義を受講している学生とともに交流?学習するスペースとして利用していた。
それに加えて、最もSOASらしいと感じたのが、火曜日から木曜日の昼にはキャンパスの中庭に多くの屋台が並び、アルゼンチン?イギリス?イタリア?ギリシャ?タイなど各国の料理が売られていたことである。多様な人々が住むロンドンだからこそのことでもある。晴れた日はそこでランチを買って周辺の公園などで食べている人が多かった。これらの屋台の料理は10ポンド程度と食堂に比べるとやや高いものの、多くの教員や学生が購入していた。さらに、キャンパスの前には毎日無料で食べることのできるキッチンカーも来ており(いくらか寄付することもできる)、そこにも昼になると大勢の学生が列を作っていたのも印象的であった。
また、夕方からはキャンパス内のパブが開店する。そこでは何種類かのビールやスナックを注文することができ、毎日多くの学生で賑わっていた。
左:SOASのキャンパス、右:SOASでの食事
左:研究報告の一場面、右:大英博物館