情報工学?人間科学系 村上久 助教らの研究グループは、歩行者集団の行動実験において、バラバラな足並みが頑健な集団的パターンを形成することを明らかにしました。
他の動物の群れ同様、歩行者の集団はひときわ目を引くパターンを自発的に作り出します。横断歩道を対面して渡る二つの集団が自然といくつかの列に分かれる「レーン形成現象」はその代表例です。生物に見られる集団現象では、その秩序の特徴として、個々の活動の同期が挙げられることがあります。では、歩行者の集団形成と個々の歩行ステップはどのような関係にあるでしょうか。
本研究では、48人の歩行者によるレーン形成実験によってこの問題に取り組みました。その結果、一定テンポのガイド音がない限り、歩行者の足並みは自発的には揃わないことがわかりました。また、ガイド音による歩行の同期は、歩行者らの横方向の動きを単調にし、結果として形成されるレーン構造を脆弱にしていました。これらの結果は、通常の歩行者集団において、個々が自分自身のタイミングで動くことで、壊れにくい流れを形成していることを示しています。足並みが揃わないことがむしろ集団を頑健にするという本成果は、群集マネジメントや、非同期的に運動せざるを得ない自律分散型群ロボットといった集団システムの設計に資すると考えられます。
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本研究成果は、2024年5月29日付けで「Journal of the Royal Society Interface」オンライン版に掲載されました。