所属 | 材料化学系 教授 |
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氏名 | 菅原 徹 |
期間 | 令和5年7月24日-令和5年12月22日 |
滞在先 | トリノ工科大学(イタリア) |
トリノ市(Turin, 伊:Torino)は、イタリアの北西部に位置する都市であり、ピエモンテ地方の中心都市です。トリノは、古くから工業、自動車産業、デザイン、工学、そして歴史的な建築物など、さまざまな側面で知られています。また、トリノ市の北西部には、インテル(プロサッカーチーム)の本拠地があります。トリノ産のトリフや、ポルチーニ茸など山の幸を利用したピエモンテ地方の料理は、ライオリなどの多彩なパスタやピザなど、イタリアでも少し独特な食文化を有しています。
筆者は、週末の昼夜や平日の夜など、スーパーマーケットなどで色々な食材を購入し、イタリア料理を自作して、ワインを片手に楽しみました。日本では高級なワインも、イタリアでは格安で手に入りました。また、イタリアのビールはあまり知られていないですが、奥深い濃くのあるビールも多数売られています。時には、トリノ工科大学の同僚たちと街のレストランでディナーやランチを楽しみました。レストランでは、普段スーパーマーケットでは調達できないような食材や料理があり、その味は格別でした。筆者は、過去にも2、3ヶ月程度の出張の経験がありますが、これほど食べ物の味が日本人に合う国はイタリア以外ないのではないかと考えています。
トリノは、自動車メーカーであるフィアットの本拠地としても有名であり、自動車産業の中心地として長い歴史を持っています。また、トリノは美しい広場や宮殿、博物館などの観光名所も豊富です。有名なものとしては、ムゼオ?エジダーレ、ムゼオ?エジダーレ?トリノ、モレッテ?サンティアゴ?ダ?コンポステーラ、マッデーナ宮殿などがあります。トリノ市内の東側には、イタリア北部を横断する大きな川(ポー川)が南北に流れており、この川の周辺は、ドーモ(礼拝堂)があり、緑地化が進んでいます。週末や休日には、カヌーやテニス、スケードボードなど多くのアクティビティが楽しめるようになっています。川沿いには、レストランなどもあり、休日には、多くの人が日向ぼっこしながら、アクティビティの観戦など、ゆっくりとした流れの時間を楽しんでいました。筆者は、週末などの休日を利用して、このトリノの街の東側を南北に流れる川沿いを約10km程度ゆっくりとジョギングして過ごしました。
本学と既に教育連携の関係にあるトリノ工科大学(Politecnico di Torino: PoliTO)は、トリノ市内大きなキャンパスを構えるイタリア屈指の工科大学です。トリノ工科大学は、1859年に設立され、イタリアでも最も歴史ある工科大学のひとつで、工学、建築、デザイン、都市計画など、幅広い分野で高品質の教育を提供しています。研究活動も非常に盛んで、産学連携も進んでいます。トリノ工科大学の研究者は、トリノを中心に展開する自動車会社を筆頭に、イタリアの枠を超え、ヨーロッパ中の企業と革新的な研究開発プロジェクトに取り組んでします。そのことも起因して、イタリア国内外から多くの優秀な学生が集まります。
トリノ工科大学の学生数は、大学生と大学院生を合わせて約3万人も在学していると伺いました。特に、大学院生が産学連携を重視されている大学であることにも起因して、大学院生が約半数に及ぶということを聞きました。特に、PhDコース(博士後期課程)の学生が多く所属していること想像していました。トリノ工科大学のメインキャンパスでは、毎月末(の週)は、ほぼ毎日卒業式(学位授与式)が執り行われていると伺いました。そのため、毎月末は、(ほぼ毎日)正装して親族や友人たちと一緒に修了式を祝う人たちの姿を見ることができました。
筆者が、トリノ工科大学で在籍した研究グループは、トリノ工科大学でも最も大きな研究グループでした。教員と博士研究員や学生で、100人規模の研究グループでした。特に、PhDコーの学生は、50人程度在籍しているとのことでした。産学連携を目的としたアクティビティの高い研究グループで、研究内容も多岐に渡り、材料をはじめ、電気電子や情報、バイオテクノロジーまで幅広い研究分野を対象に研究していました。筆者は、PhD dayと呼ばれるその研究グループで、博士後期課程の学生が年に1度、一同を介して研究発表するほとんど小さな学会に近いような研究会に、ゲスト講演をさせていただきました。その発表会では、PhD dayの最初の講演者として、日本や京都の事、本学の概要や自身の最近の研究成果の概要について発表いたしました。筆者は、本学に着任してまだ日も浅く、京都のことや本学の概要を海外に向けて発信することで、新たに学ぶことがありました。また、しばらく海外での発表から遠ざかっていたこと、特にリアルで長時間の英語を使った発表は、非常に新鮮な気持ちで発表する機会となり、とても良い経験になりました。
トリノでの生活や、滞在先の研究者や学生との交流は、研究者として今後の海外連携を強化する非常に良い経験となりました。筆者のイタリア(トリノ)滞在は、今後、学生を相互に交換する礎をつくる重要な役割がありました。筆者は、トリノ市内で4週間、3週間、3週間の3つの期間に分けて生活する場所を移動しました。これにより、短い期間でより広範囲のトリノ市内の様子を窺い知ることができました。また、大学での生活では、ERASMUS(エラスミス)と呼ばれるEUの奨学金(学生向け)について学ぶ機会をいただきました。エラスミスは、世界最大の交換留学プログラムで、ヨーロッパの国と相互に留学できるプログラムです。その間、留学先の大学の学費が免除されるだけでなく、滞在費用をまかなうための奨学金にも応募できます。筆者は、今回の派遣プログラムで得られた、経験や人との繋がりを大切にし、かつ、今後は学生達の交換留学などによりさらに連携を広く深くして行きたいと期待しています。末筆ながら、本派遣に助力いただいた方々へ温かい支援に感謝いたします。