門勇一 特定教授らの研究グループは、エクシオグループ株式会社と共同で再生可能エネルギーのシェア拡大と同システムのエネルギー利用効率を向上するパワコンレス直流給電技術を開発し、実証実験を開始しました。
再生可能エネルギー普及拡大のカギを握る太陽光発電は、既に発電抑制制御が頻繁に発動される状況になっており、これ以上発電したエネルギーを系統に大量には流し難いため、再生可能エネルギーのシェアを拡大するには課題があります。更に、買取価格と購入価格に逆ザヤが発生していることから、自分で発電したエネルギーは自分で使う地産地消型の方が経済的メリットは大きくなります。一方、太陽光発電では、発電は昼間に限定されるため、電力消費行動のパターンと合わない場合は、蓄電池等でエネルギーを貯めておく必要があります。
太陽光で発電して蓄電池に電力を蓄電し、負荷に電力を供給する一般的なシステムは図1の構成をしています。パワーコンディショナーと呼ばれる装置には主に3つの電力変換器が入っています。電力変換器は、太陽電池から効率良く電力を取り出したり、蓄電池の充電や放電を制御したり、負荷に合わせて交流等に変換する役割を担っています。
それぞれの電力変換器は、変換する際に5~15%程度の変換ロスが発生します。発電して蓄電したエネルギーの場合、電力変換器にて4回の電力変換を行うため、個々の電力変換器の変換効率が高くても、電力変換を4回行うと負荷装置で使えるエネルギーは、発電したエネルギーの60~70%程度しか使うことができていませんでした。
今回開発した技術は、この変換効率を大きく改善するものです。提案するシステム構成を図2に示します。この提案システムでは、電力変換器の数を極力少なくしたため、負荷に合わせて電力を調整するための電力変換器を1台だけ使っています。太陽電池や蓄電池などは直流で接続しています。従来システムに比べて電力変換器を削減した代わりに、施工段階で太陽電池パネルの直並列数を調整して蓄電池とマッチングさせる技術と、運用時の制御には損失が少ない半導体遮断器を開発しました。これらの技術により、エネルギーの利用効率を大幅に高めることができると考えられます。このパワコンレスの直流給電システムを今回試作し、実証実験を開始しました。
図1 現行の太陽光発電システム
図2 パワコンレス太陽光直流給電システム