所属 | 機械工学系 助教 |
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氏名 | 武末 翔吾 |
期間 | 令和5年9月19日-令和6年3月15日 |
滞在先 | カリフォルニア大学デービス校(アメリカ合衆国) |
令和5年9月下旬から半年間、米国のカリフォルニア大学デービス校(University of California、 Davis:UC Davis)にVisiting Scholarとして滞在しています。カリフォルニア大学システムは、ロサンゼルス校、バークレー校など10校から構成され、著者はその中の1つであるデービス校に滞在しています。デービスはサンフランシスコから北東に100 kmほど、車で約1時間半かかる都市です。日本よりも夏は涼しめ、冬は暖かめで雨もほとんど降らない生活しやすい気候ですが、1日の最低気温と最高気温の差が20 ℃ほどある日もあり、1日の中での寒暖差には注意が必要です。治安は極めて良く、日本と同様の感覚で生活していてもほとんど問題ありません。小さい都市であり、市民の半分はUC Davisの学生や関係者と言われています。そのため、勉強や研究に集中できる環境ですが、観光地といえるようなところはほとんどありません。多くの学生が自転車で通学し、キャンパス内も自転車で移動しています。一方、バスも整備されており、著者は大学から少し離れたところに住んでいたため、毎日15分ほどかけてバスで通っていました。アメリカ人以外、特にアジア人も多く、キャンパス内や市内では中国語やたまに日本語の会話も聞こえてきます。
UC Davisは農学が盛んであり、農学部や獣医学部は世界でもトップクラスです。著者はDepartment of Mechanical and Aerospace EngineeringのSoshi教授の研究室に滞在しています。加工分野の研究を行っている研究室で、3次元プリンタや5軸マシニングセンタなどを所有しています。デービスには日本の工作機械メーカーであるDMG森精機株式会社のアメリカ工場があり、同社の設備を使用したり、修士課程の学生は同社へのインターンシップを行っています。著者は材料の微視組織や強度を専門としており、最近3次元プリンタで作製された材料の研究も始めていたため、海外での教育経験を積むとともに加工分野における3次元プリンタの研究を経験するため、Soshi教授の研究室に滞在させていただくことになりました。研究室には博士課程学生が2名、修士課程学生が3名、学部生が5名所属しており、著者の滞在中にはイタリアから博士課程の学生が1年間留学に来ていました。
教育関連の活動として、修士課程学生向けの講義Mechanical and Aerospace Engineering Seminarに毎週参加しました。これは、UC Davisの教員や学外の研究者が自身の研究内容について講演し、出席している学生と議論するものです。日本と比較すると、出席している学生は真剣に講義を聴講し、質疑応答も活発になされていた印象であり、見習う必要があると感じました。また研究室のゼミにも毎週参加しました。1回につき学生が2名程度自身の研究の進捗について発表し、全員で議論しています。1時間の予定が2時間程度かかることもあり、特に学生同士の議論が深く行われ、ゼミ後も不明点は継続して議論していることが印象的でした。
研究関連では、3次元プリンタの1種である指向性エネルギ堆積法(Direct Energy Deposition:DED)により造形したステンレス鋼の形状精度、造形速度、材料特性向上に関する研究を博士課程の学生とともに行いました。形状精度や造形速度向上のための3次元プリンタのハード面、ソフト面の改良などに関する研究は初めての経験でした。普段は作製された材料の特性評価を中心に研究を行っていますが、その前段階の材料を加工する研究に携わり、いろいろと勉強させていただくことが多かったです。一方、造形材に生起する残留応力測定や造形材内部に形成される欠陥観察は滞在先の研究室では初めての試みであり、著者は日本で経験があったため、少しは役に立てたかと感じています。Soshi教授の専門分野の材料加工と著者の専門分野の材料の微視組織や強度は近い分野で連携もしやすいため、今回の滞在を機に、帰国後も継続して共同研究を行いたいと考えています。
本稿を執筆しているときには、帰国まで早くも残り1カ月程度となっています。UC Davisでできることをできる限り行い、帰国後の教育?研究活動に活かしたいと思います。今回の著者の滞在を受け入れていただいたUC DavisのSoshi教授、研究室の大学院生のWeijun君、Kazi君、Muqing君、またSoshi教授を紹介していただいた理化学研究所の片平和俊先生には大変お世話になりました。また、今回の渡航を支援していただいたスーパーグローバル大学創成支援事業、本学国際課の方々に御礼申し上げます。最後になりましたが、著者の不在中の業務等を担当いただいている森田辰郎教授をはじめとした機械工学系の先生方、また不便をかけている研究室の学生の皆さんに感謝申し上げます。
左:機械?航空宇宙工学系の建物(Bainer Hall)、右:学生居室でも活発な議論が行われます