令和4年度海外教育連携教員派遣報告
小島 紘太郎 助教 (イギリス?シェフィールド大学)

所属 デザイン?建築学系 助教
氏名 小島 紘太郎
期間 令和4年10月1日-令和5年3月23日
滞在先 シェフィールド大学(イギリス)

 私は、イギリス、シェフィールド大学(The University of Sheffield)、Department of Automatic Control and Systems Engineering (ACSE)に所属のZi-Qiang Lang教授の研究室に2022年10月より6か月間滞在しました。

[シェフィールド]
 シェフィールドは、サウスヨークシャーにある人口約60万人の都市で、首都ロンドンから電車で2時間~3時間、北西に進んだ場所にあります。マンチェスター、バーミンガム、リーズなどのイギリスの主要都市へ電車で1時間~1時間半程度で訪れることができ、1時間程度で訪れることができるヨーク市にはヨーロッパで最大規模のゴシック様式カテドラルであるヨークミンスターがあります。大学付近ではイギリス国外からの留学生も多く、シェフィールド大学のHPによると、シェフィールド大学には150か国以上から留学生が訪れています。人口の約10%は学生で、大学付近は学生にとっても暮らしやすい都市となっていました。シェフィールドは自然豊かな都市でもあり、西にはピークディストリクト国立公園があります。ピークディストリクト国立公園はイギリス初の国立公園であり、私も滞在中に2度訪れましたが、休日はシェフィールドや近隣の都市から多くの人が訪れハイキングなどのアクティビティを楽しんでいるのが印象的でした。


シェフィールドの様子 (左:West streetとスーパートラム,右:ピークディストリクト国立公園)

シェフィールドの様子 (左:West streetとスーパートラム,右:ピークディストリクト国立公園)

シェフィールドの様子 (左:West streetとスーパートラム,右:ピークディストリクト国立公園)

[シェフィールド大学とACSE]
 シェフィールド大学には、工学を含む6つの学部と55の学科があり、学生数はおよそ3万名です。イギリスの主要な24の国立研究大学から構成されるRussell Groupの一校であり、Times Higher Education World University Rankingsの国際性ではTop 50に入る大学です。
 私が滞在したASCEは、自動制御とシステム工学に特化した学科で、300名以上の学部生と大学院生が所属しております。学部には、Computer Systems EngineeringとMechatronic and Robotic Engineeringの2つのコースがあり、大学院生(MSc)には、Advanced Control and Systems Engineering, RoboticsとAutonomous and Intelligent Systemsのコースがあります。ASCEにはシステムやそれらのモデリング?設計?制御に関する研究、ロボティクス?メカトロニクスに関する研究を行っている研究者が多く所属しています。システムのモデリング?設計?制御およびロボティクス、メカトロニクスは、産業、工業、製造業等を含む幅広い分野と関係があり、ASCEの研究者の研究テーマも幅広いものとなっています。滞在中に、いくつか研究室を見学させていただきましたが、ロボットや機械の制御からバイオメディカルへの応用等、幅広い分野の研究室がありました。その関係もあってか、ACSE所属の教員や研究者のオフィスの多くはAmy Johnson Buildingと呼ばれる棟にありましたが、ゼミや実験を行うラボはAmy Johnson Building以外の棟にも広く分布していました。また、ACSEの学生は、The Diamondと呼ばれるコンピューターエリアや制御、ロボティックスのラボなどが充実した施設で、課題や研究に取り組んでいます。私もAmy Johnson Buildingの地下にある3人部屋のResearch officeにデスクを準備していただきました。Amy Johnson Buildingの隣にあるEngineering Heartspace atriumにHeartspace Caféというカフェがあり、私も良くコーヒーを購入していましたが、そちらでも工学部の学生や研究者が課題や研究に関して議論している様子をよく見かけました。


シェフィールド大学の様子 (左:Amy Johnson Building,右:The Diamond)

シェフィールド大学の様子 (左:Amy Johnson Building,右:The Diamond)

シェフィールド大学の様子 (左:Amy Johnson Building,右:The Diamond)


シェフィールド大学の様子 Portobello St.からの大学の様子

シェフィールド大学の様子 Portobello St.からの大学の様子

[シェフィールド大学での教育活動]
 私の滞在を受けれて下さったLang先生は非線形システムのモデリング、同定、解析、デザインやこれらの理論に基づく構造物のヘルスモニタリング?損傷検出などを専門にされています。Lang先生は上記の技術の応用として、建築耐震工学を専門とする研究者とコラボレーションしており、地震時の建物の振動制御や制振ダンパーの設計?最適化に関する研究もされています。
 私の滞在中の主な教育活動は、Lang先生の研究室に所属する学生の卒業プロジェクトミーティングとLang先生の講義への参加でした。初めに卒業プロジェクトのミーティングへの参加について記したいと思います。私は滞在中にLang先生が指導する学生のうち、2名の学部生の卒業プロジェクトのミーティングに参加させていただきました。この2名の学部生は卒業プロジェクトで、制振ダンパーの最適配置や地震時の建物の振動のアクティブ制御に関する研究に取り組んでいました。ミーティングは一週間に一回のペースで行われており、Meetingでは進めていく課題について検討し、学生はその課題を進めながら、次のMeetingでその週の進捗を発表、その成果を元にLang先生や学生と議論を行いました。また、建物の振動や地震応答解析手法に関する資料や計算プログラムとその説明資料などを英語で作成し、ミーティングでは本資料を用いて解説も行いました。
 大学院生を対象にしたシステム同定(System Identification)の授業にも参加させていただきました。Lang先生の授業は講義形式で50分の講義が2回連続して行われており、合計は100分と本学の授業時間よりも少し長いものの、途中に10分程度の休憩をはさむことにより集中して講義を聴くことができるように感じました。本講義の最終回では、20分程度のショートレクチャーを実施する機会をいただき、Lang先生の講義で説明されていたシステム同定の理論が建築構造分野でどのように応用されているか、建物の振動台実験に応用した事例をもとに紹介しました。
 シェフィールド大学での活動では、これまで講義で使用していた資料等の英語化や英語での新しい説明用の資料の作成、またこれらの資料を用いたレクチャーを通して、自分の資料を改めて見直すことができ、自分の専門分野やその基礎を英語で説明する良いトレーニングになりました。

[シェフィールド大学での研究活動]
 滞在中は上記の教育活動に加えて、Lang先生とロンドン大学クイーン?メアリー校(Queen Mary University of London)のLecturerであるYun-Peng Zhu講師と共に建物に配置する非線形ダンパーの最適化に関して共同研究を行いました。また、Lang先生とZepeng Liu研究員(Lang先生の研究室のポストドクター研究員)とは建物のシステム同定手法に関して共同研究を行いました。
 Lang先生の紹介で、ACSEだけでなく、Department of Civil and Structural EngineeringのIman Hajirasouliha教授ともお話をする機会を得られました。Hajirasouliha先生に耐震設計に関するHajirasouliha先生の研究の説明や実験室の案内をしていただき、Lang先生と共に最適設計や制振技術について議論させていただくことができました。
 Lang先生、Hajirasouliha先生、Zhu先生、Liu研究員とは、帰国後も滞在中に実施していた研究について定期的に連絡を続けており、研究室規模での交流が実施できるように進めていきたいと考えています。

[終わりに]
 今回のイギリス?シェフィールド大学での滞在では、Lang先生の多大なご厚意もあり、教育と研究の両方で得難い経験をさせていただくことができました。いろんな分野の方と交流させていただく機会を多く得ることができ、本研修は今後の教育、研究の両方において大変有意義な経験になりました。スーパーグローバル大学創生支援事業助成にて、シェフィールド大学での研修の機会を与えていただきましたこと、心より感謝申し上げます。
 滞在を受け入れてくださいましたZi-Qiang Lang教授、シェフィールド大学での研究および生活をサポートしてくれましたYun-Peng Zhu講師とZepeng Liu研究員、日英の大学教育や研究の違いについて議論させていただいたShuhei Miyashita講師、建物の耐震設計について議論させていただいたIman Hajirasouliha教授ならびに私の滞在をサポートしてくださいましたシェフィールド大学の職員の皆様には、心よりお礼申し上げます。
 本海外研修では国際課の皆様に多大なご支援をいただきました。不在中の業務に関しまして、デザイン?建築学系の先生方、学域事務室ならびに支援室の皆様には多大なご支援をいただきました。特に、同研究グループの金尾伊織教授、満田衛資教授、村本真准教授には、授業および研究室業務において多大なご支援をいただきました。この場を借りて、心より感謝申し上げます。

[参考]
The University of Sheffield: https://www.sheffield.ac.uk/
Department of Automatic Control and Systems Engineering: https://www.sheffield.ac.uk/acse
Department of Civil and Structural Engineering: https://www.sheffield.ac.uk/civil