情報工学?人間科学系 村上久助教、東京大学先端科学技術研究センターのカ ギョウロ特任助教、フェリシャーニ クラウディオ特任准教授、柳澤大地准教授、西成活裕教授、電気通信大学の長濱章仁助教らの研究グループは、集団のなかにいる歩行者は、単に周辺密度の高さだけではなく、普段通りの速さで歩けなくなることによって、より混雑を感じることを明らかにしました。
混雑を感じる理由を「周りにたくさんの人がいるから」と考えるのは直感的なことです。実際、従来の多くの研究では歩行者の混雑感の物理指標として「密度」が採用されてきました。しかし、これまで「密度指標」と「他の物理指標」との比較や、「密度指標」と「心理指標」を合わせた実験的検証は行われてきませんでした。
本研究では、歩行者集団実験において、個々の歩行者の「周辺密度」と「歩行速度」を計測し(物理指標)、さらにアンケートで「混雑感」を調べる(心理指標)ことで、初めて両指標を比較しました。その結果、「周辺密度」よりも「歩行速度」を指標とした方が、「混雑感」をより良く推定できることが明らかになりました。さらに、普段の「歩行速度が速い人」は「歩行速度が遅い人」より混雑を感じやすいことがわかりました。これらの結果から、「理想的な歩行速度」と「実際の速度」のギャップが大きいほど、歩行者はより混雑を感じると考えられます。「物理指標」で混雑感をより正確に推定できるようになることは、群集マネジメントの大きな一歩であり、より快適な歩行者空間の実現に繋がると期待されます。
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本研究成果は、2022年5月12日に科学誌「Transportation Research Part F」(外部サイト)のオンライン版に掲載されました。
図:実験装置内の速度の分布