東京大学大学院工学系研究科の澁田靖准教授、京都工芸繊維大学機械工学系の高木知弘准教授、北海道大学大学院工学研究院の大野宗一准教授らの研究チームは、スーパーコンピュータを用いた大規模分子動力学法シミュレーションにより純金属過冷却融液からの均質核生成過程を再現し、均質核生成中に局所的な不均一性が発現することを発見し、そのメカニズムの解明に成功しました。
金属材料生成の多くは核生成に端を発しますが、 実際のプロセスでは不純物や壁からの不均質生成に支配されます。よって理想的な均質核生成の多くは未だ不明で議論の渦中にあります。研究チームは今回、純金属過冷却融液中に発現した先行核周りの液体に20面体の局所構造が増加し多数の衛星核を発現させることや、一部の先行核表面から特定の方位関係を持った別の結晶粒が不均質核生成するなど、均質核生成中においても局所的な不均一性があることを明らかにしました。これらの成果は基礎現象の解明という学術分野の開拓だけでなく、スーパーコンピュータに立脚した材料プロセス研究に新たな設計を与えることが期待されます。
本成果は英国のオンライン科学雑誌Nature Communicationsに掲載されました。
なお、本研究は科研費基盤研究(B)、学際大規模情報基盤共同利用?共同研究拠点および、革新的ハイパフォーマンス?コンピューティング?インフラの助成を受けて実施されました。また本研究の一部は、文部科学省ポスト「京」重点課題7「次世代の産業を支える新機能デバイス?高性能材料の創成」(CDMSI)の一環として実施したものです。
Nature Communications:http://www.nature.com/articles/s41467-017-00017-5
日本経済新聞社:http://www.nikkei.com/article/DGXLRSP441643_V00C17A4000000/