所属 | 分子化学系 |
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氏名?職名 | 楠川隆博准教授 |
専門分野 | 分子認識学 |
期間 | 平成27年8月17日-10月24日 |
滞在先 | リーズ大学化学科 |
リーズは英国中心部のウエスト?ヨークシャー地方にあり、英国の北の首都とも言われており、特に金融業についてはロンドンの次に盛んな都市である。リーズにはリーズ大学をはじめとする多くの大学があり、学生の街でもある。リーズ大学は英国内で14番(2015年度)にランキングされ、科学技術の研究レベルが高いことで知られている。リーズ大学には約32,000人の学生が在籍しており、約7,000人が英国以外の146ヶ国からの留学生であるが、日本人の留学生は20名以下となっているのは、多額の学費を納める必要があるからだと思われる。なお、リーズ大学で夏季に行われる短期の語学研修には、多くの日本人が参加している。
英国の大学は学部3年、修士1年、博士課程3~4年となっているのが標準的であり、1年間の講義と研究で修士を修了できるのが特徴である。リーズ大学の化学科 (School of Chemistry) の修士課程には、1) MChem: 通常の講義と研究を行うコース、2) MChem Industrial: 企業で1年間働きながら修士の学位を取得するコース、3) MChem International: 海外の大学や研究所で研究を行って学位を取得するコースがある。2) のMChem Industrial コースでは、常勤の職員と同等の給与が学生に支払われるため人気が高い。もちろんこのIndustrial コースを修了後に博士課程に進学する学生も多い。化学科は1学年150人で、3) のInternational コースには毎年8人程度、2) のIndustrial コースには最大で120人の学生が進学するため、学内の研究室へ配属される修士課程の学生が極端に少ない。研究室内の研究は博士課程の学生とポスドクが主におこなっているが、現実問題として奨学金が獲得できなければ博士課程に進学できないため、教授は奨学金などの人件費を獲得できなければ、研究を行えない状況下にある。 有機化学系の責任者 (Head of Organic Chemistry) の Colin Fishwick 教授には、学部?大学院のカリキュラムについて議論する時間を割いて頂いた。
今回の海外研修の受入先である、Andrew Wilson 教授の講義に参加させていただいた。Fundamental of Chemical Biologyという一つの講義科目を3人の教員で担当し、1人が毎日1時間の講義と演習を行い2週間(1~2週目)で講義と演習を終了する。3週目と4週目は別の講義を受講し、5週目には1~2週目の講義のテスト(120分)が行われる。
受講者8名の大学院の講義であるが、60分の講義の中に学生に対する質問事項を多く盛り込んでおり、学生に意見や質問の答えを言わせるように講義が組み立てられていた。一方的に話をすることが多い日本の講義との大きな差を感じた。質問に答えたり、意見を述べる必要がある講義では学生も眠くならないであろう。また、講義の説明中は外国人特有のゼスチャーを使って講義内容を説明していることにも圧倒された。学生に対する質問を盛り込むことや、表現方法については、帰国後の講義にぜひ取り入れたいと感じた。
リーズ大学化学科の建物内にあるChaston Chapmanラウンジには化学科内から投稿された論文の表紙が掲示されている。研究者にとって投稿した論文が雑誌の表紙に採用されることは大変名誉なことであり、リーズ大学化学科内の研究レベルの高さに圧倒された。
Chaston Chapman ラウンジ | ラウンジに飾られたジャーナルの表紙 |
今回の研修先のAndrew Wilson教授は、14年前の在外研究員制度で訪問した米国イェール大学で知り合った友人である。Andrew Wilson教授をはじめ、研究室のメンバーの方々には非常に親切にして頂いている。また、Wilson教授と共同研究を行う話があがっており、今後の指導学生の短期滞在など国際的な交流を続けていく予定である。今回の研修が今後の教育?研究活動に有意義となるよう、残りの時間を過ごしたいと考えている。