平成27年度海外教育連携教員派遣報告
金折賢二 准教授 (ピッツバーグ大学)

所属 分子化学系
氏名?職名 金折賢二 准教授
専門分野 核磁気共鳴法を用いた生体関連分子の構造と機能の相関の解明
期間 平成27年4月10日?9月26日
滞在先 ピッツバーグ大学

 

ピッツバーグ大学

写真1 UPMC

写真1 マウントワシントンからダウンタウンおよびピッツバーグ大学のあるオークランドを望む

 ピッツバーグといえば 鉄鋼の町、と習った古い記憶があったのですが、今では先進医療と大学の町として、全米の中でも住みやすい町の上位にランキングされています。その医療の中心に位置するのがピッツバーグ大学メディカルセンター(UPMC)で、 ダウンタウンのUSスチールのシンボル的なビルが今ではUPMCビル(写真1)になっています。ピッツバーグ大学医学部(University of Pittsburgh School of Medicine)はこれまた全米ランキングの上位の医学部であり、そこのDepartment of Structural Biologyに4月?9月まで所属して教育研究にたずさわっています。ピッツバーグ大学自体が巨大な上に、病院も併設しているので、行ったことのないビルがほとんどなのですが、Cathedral of Learning(写真2)は誰でも入れるランドマーク的な建築物で、38階からの眺めは一見の価値があります。中には普通の教室以外に、日本を含む世界各国の特徴を表したNationality roomsという教室が30ぐらいあって、そこでも実際に授業が行われています。

 

Summer Undergraduate Research Program(SURP)

写真2

写真2 夕日に映えるCathedral of Learning

 渡米した時期がピッツバーグ大学においては年度末であり、学部は期末試験前、大学院授業もほとんどが最終時期でしたが、School of Medicineでは5月末から7月末まで10週間、学部生を対象にした SURPと呼ばれるプログラムが実施され、それにメンターとして参加しました。SURPでは、学部学生が2ヶ月間ラボワークを学び、研究概要を提出、最終日に15分の研究発表、というキャリアを積む機会が設けられています。ピッツバーグ大学だけではなく、全米のすべての大学から700名以上が応募し、書類審査(平均GPA 3.7!)、面接を経て50名程度が採用されます。SURP 学生として受け入れが決定すると、ドミトリーが準備され、さらに、各人に給料($3,500)が支払われます。Interdisciplinary(学際的)であることが強調されており、数多くの教員、職員がそれぞれの学生に接して、ピッツバーグ大学の魅力を伝えることになっています。

 SURPの学生は、毎日のラボワークに加えて、毎週水曜日の夕方に、将来のcareer developmentについて様々なスピーカー(Faculty stuff、Principal Investigator、ポスドク、博士課程在籍学生、同窓生など)の話を聞くことになっており、このプログラムは学生の意識向上に努めるように組織化されています。また、ピッツバーグパイレーツの試合の観戦やピクニックといったレクリエーションもあり、参加している学生同士が気持ち良くプログラムを消化できるように工夫されているのも、アメリカらしいところです。このSURPを修了すると修了証書が授与され、それは学生の履歴書に書くことができたり、将来の大学院進学、就職の際に推薦状を書いてもらえたり、と大いに役立つことから、ポスドクなどに混じって本気で研究に取り組んでいました。

 所属部署にも4名のSURPの学生が来ていたのですが 、彼らと研究のバックグラウンドに関する論文を2週間毎日読み、その背景や基礎理論から実際のラボワークとのつながりについて説明を行うということをしていました。SURPメンターの会合では、SURPで運営に関わっている教員が集まり話し合う機会があり、そこでは、他大学の学生受け入れ方法や宣伝の方法について議論され、さらに、受け入れ学生の生活指導まで話し合われていました。博士課程に優秀な学生を数多く受け入れることこそが大学の活性化の鍵であり、そのためにヒューマンリソースと資金を投じている、とのことでした。全米トップクラスの大学でもこのような努力をしていることに驚きを感じながら、同じような努力を地道にしていく必要性を感じています。