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プラズマ(電子とイオン、また原子や分子を含む電離気体)は、いまや集積回路を作製する手段を提供するものとして欠かせません。私たちは、プラズマに含まれる小さな物質(固体や液体の微粒子)に注目して、その物理と化学を追いかけてきました。一方で、研究室の名前を電子物性工学と掲げています。これは、“電子の振る舞いがものの性質を決める”ことを信念とし、そこへのより深い理解により新たなる知見と未来の技術をもたらそうとすることを意味しています。
プラズマに固体の微粒子(大きさは数マイクロメートル程度、例えば、花粉やPM2.5と同様のもの)を導入すると、微粒子は帯電します。帯電による微粒子間相互作用により、微粒子の配列に秩序が生まれます。ちょうど、原子が規則正しい構造である結晶をつくることに似ています。この現象は、1994年にこの研究室で世界に先駆けて発見されました。この配列は、微粒子プラズマのクーロン結晶と呼ばれています(図1)。クーロン結晶は肉眼で観察することができます。微粒子を原子や分子に見立てれば、相転移現象など、結晶構造における物理現象をより簡単に解析できます。このプラズマ中の微粒子の挙動解析が、私たちの研究の出発点です。
宙を舞う埃(微粒子)もやがては重力に引かれて地にたまります。プラズマ中を浮遊する微粒子にも重力がはたらきます。重力がはたらかない環境では、クーロン結晶はどのような構造になるのか?この疑問が、実験環境としての微小重力環境を求めるきっかけとなりました。国際プロジェクトや宇宙機関の協力を得て、微小重力環境下のクーロン結晶の構造を観察することに成功しました。航空機の放物線飛行によって微小重力環境をつくりだした実験(図2)では、プラズマ中の正電荷であるイオンが負電荷をもつ微粒子に対して、束縛力を生じさせる電位構造(ウエイクポテンシャル)を形成することが明らかになりました(図3)。私たちは、現在も、国際宇宙ステーションで実験を進める欧州宇宙機関の科学チームの一員としてこの研究をつづけています。
日常何の気なしに手にするスマートフォンに使用される集積回路では、その素子の大きさは5ナノメートルにまでなっていると言われています。そのスケールの加工をプラズマが担いますが、果たしてプラズマはどこまでの微細化を可能とするのでしょうか。これも半導体(シリコン)表面の微粒子に注目して考えています。シリコンウェハにトランジスタを作るとき、フッ素もしくは塩素のプラズマの作用によりエッチングを行います。エッチングされた最表面ではある程度の粗さを避けられず、また微結晶が形成されることも明らかとなりました(図4)。これ以上の微細化をめざすためには原子層を制御することが必要になりますが、そのヒントを与えてくれる結果だと考えています。
また、表面に微粒子を輸送する、また配列させることを利用して、意図的に新しい構造を作製することができます。微粒子配列により、電磁波に対する制御機能を発現させる、また微粒子単体分析の要素技術を与えることが期待されています。プラズマをうまく利用すると、粒径が数マイクロメートルの微粒子を一個ずつ並べることもできるのです(図5)。
人の生活環境は微生物であふれています。特に最近は、人体に悪影響を与えるウイルスを含んだ微粒子が注目を浴びています。かつてより放電を用いた集塵機が使われてきました。プラズマを使って微粒子の挙動を積極的に制御することを利用して、さらに精度の高い集塵、また病原体の不活化ができるのではないかと考えています。実際に芽胞菌をプラズマ中に導入し、それを輸送、また不活化できることを示しました(図6)。また、プラズマは細胞の分裂や植物の生長にも影響を与えます。代謝や刺激伝達などの生命活動は、電子の移動により説明されることから、電子物性工学の立場で、生きもののことを考えることができるのです。物理、化学、電子工学を基礎として、プラズマと微粒子を理解し、得られた成果を電子産業への応用のみならず、生きものを通して農業や食品産業における技術として届けることを日々願い、さらなる探求をつづけていきます(図7)。
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